採択される事業計画の書き方 審査項目と数値目標
補助金の事業計画は、公募要領に公表された審査項目に沿って書くものです。持続化補助金、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、デジタル化・AI導入補助金の審査項目の読み方、付加価値額や給与支給総額の数値目標の立て方、よくある減点を、ITコーディネータの監修のもとで整理します。
審査項目は公募要領に書いてある
審査項目は公募要領に公表されており、審査員はその項目ごとに評価します。最初に、公募要領の「審査項目」「審査の観点」の節を読み、項目ごとに自分の計画のどこで答えているかを対応づけます。項目に対応する記述がない計画には点がつきません。
小規模事業者持続化補助金の計画審査は、自社の経営状況分析の妥当性、経営方針・目標と今後のプランの適切性、補助事業計画の有効性、積算の透明・適切性の4項目で、いずれも売上高・売上総利益の増加を目指す内容かを見ます。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の書面審査は、補助対象事業としての適格性、経営戦略との整合性、事業の実現可能性、公的補助の必要性、政策面で、新事業進出枠では新市場性・高付加価値性が加わります。デジタル化・AI導入補助金は、自社の経営課題を理解しているか、改善すべきプロセスと導入するITツールの機能が合っているか、労働生産性の向上率はどうか、賃上げに取り組んでいるかを見ます。
3つに共通するのは、現状分析、課題、取組、効果(数値)、体制・資金・スケジュールという流れです。審査員が知りたいのは「この会社が、この投資で、どの課題をどれだけ解決し、それを何で測るか」です。
計画の構成
現状分析では、自社の強み・弱みと、市場や顧客の動向を書きます。持続化補助金は「自社の製品・サービスや強み・弱みを適切に把握しているか」を、ものづくり系は「外部環境と自社の経営資源を踏まえた競争優位性」を問うています。強みは、受注実績や保有する技術など、確かめられる事実で示します。
課題と取組では、課題の原因と、投資がその原因にどう効くかを結びます。「人手不足だから自動機を入れる」ではなく、「検査に1日4時間かかり受注を断っている。自動検査装置で1時間にし、断っていた月20件を受ける」という書き方です。デジタル化・AI導入補助金が「改善すべきプロセスとITツールの機能がマッチしているか」を審査項目にしているのは、この対応関係を見るためです。
体制・資金・スケジュールでは、担当者、資金の調達方法、期限を書きます。ものづくり系は財務状況と金融機関からの資金調達の見込みを項目に挙げており、補助金は後払いなので、全額を一度に支払う資金の手当てが問われます。
数値目標の立て方
数値目標は、補助金ごとに定義が決まっています。付加価値額は営業利益+人件費+減価償却費で、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では年平均成長率4.0%以上が基本要件です。1人当たり給与支給総額は給与支給総額÷従業員数で、同補助金では年平均3.5%以上、デジタル化・AI導入補助金では150万円以上の申請で年平均3%以上が要件です。労働生産性は付加価値額を労働量で割った指標で、分母は制度ごとに違うため公募要領の計算式を使います。
年平均成長率は複利で計算します。基準年度の付加価値額が2,000万円なら、4.0%で3年後は2,000万円×1.04の3乗で約2,250万円です。目標値は、売上を単価×数量に分解し、投資で増える数量や上がる単価に根拠をつけて積み上げます。基準値を大きく上回る目標は高さと実現可能性の両方を見て審査されるので、根拠なく高く書くと減点されます。逆に基準値を下回れば要件未達で失格です。賃上げの目標は未達なら返還の対象になるため、達成できる水準に少し上乗せした値が現実的です。
よくある減点
監修者が審査項目と失格条件をもとに整理した、よくある減点は次のとおりです。
提出資料の不足と要件の不一致は、審査に入る前に失格になります。持続化補助金は基礎審査で、必要な資料がすべて提出され、対象者・対象事業・対象経費の要件に合致することを満たさなければ失格と明記しています。
枠の定義に合わない計画は、適格性で外れます。既存製品の増産を革新的新製品・サービス枠で出す、既存顧客向けのメニュー追加を新事業進出枠で出すといった例です。
課題と手段がつながっていない計画は、有効性や実現可能性で評価されません。ツールや設備の説明が長く、自社の課題の記述が短い計画はこの型です。
根拠のない数字は、目標値の実現可能性で減点されます。過去の決算と連続性のない売上計画も同じです。
第三者への過度な依存は、ものづくり系で明示的に審査項目になっています。外部が書いた定型文の計画や、外注先に丸投げする体制がこれに当たります。計画は事業者自身が書くものですし、報酬を得て申請書類を作成できるのは行政書士に限られます。
経費の積算が不明確な計画は、積算の透明・適切性で減点されます。相見積が必要な金額で1者の見積しかない例などです。
過去に採択された事業と同じ内容は不採択になり、持続化補助金では実施回数に応じて段階的に減点されます。
書き始める前に
公募要領を最後まで読み、審査項目と失格条件を一覧にし、直近の決算、従業員数、事業場内最低賃金、給与支給総額を手元にそろえてから書き始めてください。各制度の詳細は小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金、デジタル化・AI導入補助金の記事にまとめています。
出典
- 小規模事業者持続化補助金 第20回公募要領(第8版)「12. 採択審査」: https://r6.jizokukahojokin.info/doc/r6_koubover8_ip20.pdf
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回公募要領「3. 審査項目」: https://mirasapo-plus.go.jp/wordpress/wp-content/uploads/2026/06/30141726/shinmono_application_guidelines_01-1.pdf
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領 通常枠「3-3 交付申請の審査」: https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_kaitei_koubo_tsujyo.pdf