補助金と助成金の違い 採択・後払い・返還・課税
補助金と助成金は何が違うのか。採択審査の有無、交付決定後に着手して後払いで受け取る仕組み、賃上げ未達や財産処分で生じる返還、法人税の課税と消費税の不課税、固定資産を買ったときに使える圧縮記帳の概要、そして申請は誰が行うのかを、法令と公募要領をもとに整理します。
言葉の使い分け
補助金と助成金は、法律上はどちらも国や自治体が返済不要の資金を交付する「補助金等」で、名称だけで性質が決まるわけではありません。ただ実務上は使い分けの傾向があります。経済産業省・中小企業庁の制度は「補助金」と呼ばれ、予算の枠に対して応募が多いため、事業計画を審査して採択・不採択を決めます。厚生労働省の雇用関係の制度は「助成金」と呼ばれ、要件を満たした申請には原則として支給されます。自治体の制度はどちらの名称も使われ、審査の有無はそれぞれの要綱で決まります。
本サイトの補助金・助成金一覧では両方を同じ一覧で扱っています。審査型か要件充足型かは、各ページから公式サイトに進んで公募要領や支給要領で確かめてください。
採択の有無
審査型の補助金では、申請しても採択されないことがあります。小規模事業者持続化補助金の公募要領は「本補助金は、審査があり、不採択になる場合があります」と明記し、採択されても希望額から減額されることがあると書いています。デジタル化・AI導入補助金も外部審査委員会の意見を聴いて採択を決め、審査内容は開示しません。一方、業務改善助成金のような助成金は、賃金の引上げと設備投資の計画が要件を満たしていれば交付決定されますが、予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集が終わることがあります。
後払いという原則
補助金も助成金も、交付決定を受けてから事業に着手し、支払いを終えて実績報告を提出し、額の確定を経て振り込まれる精算払いが原則です。交付決定前に契約や購入をしたものは対象になりません。設備の代金はいったん全額を自己資金か借入で支払う必要があります。デジタル化・AI導入補助金の6次締切分では、交付決定が2026年12月10日、事業実績報告の期限が2027年5月31日の予定で、入金はさらにその後です。資金繰りの計画は、入金が半年から1年先になる前提で立てる必要があります。
返還が生じる場合
返還は不正の場合だけではありません。デジタル化・AI導入補助金や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、賃上げの目標を達成できなかった場合に、未達の年度に応じて補助金の一部または全部の返還を求められます。補助金で取得した単価50万円以上の機械や、ウェブサイト・システムは「処分制限財産」になり、一定期間(持続化補助金では通常、取得日から5年間)は事務局の承認なしに売却・廃棄・目的外使用ができず、承認を得ても残存簿価に応じた返還が生じることがあります。虚偽や二重受給などの不正があれば、交付決定の取消しと加算金付きの返還、事業者名の公表の対象です。
課税の扱い
受け取った補助金・助成金は、法人税・所得税の計算では収益(雑収入)として課税所得に含まれます。経費を補填する助成金も同じです。消費税については、国または地方公共団体からの補助金や助成金は対価を得て行う取引ではないため、課税の対象になりません(不課税)。補助金で購入した設備の消費税は通常どおり仕入税額控除の対象で、補助金によっては控除した分を事務局に報告・返還する手続きを求めるものがあるので、公募要領で確認してください。
圧縮記帳の概要
固定資産の取得に充てるために交付された補助金は、受け取った事業年度に全額が益金になると、資産を買った年だけ税負担が集中します。これを和らげるのが圧縮記帳です。法人税法第42条は、固定資産の取得または改良に充てるための国または地方公共団体の補助金の交付を受け、返還を要しないことがその事業年度末までに確定し、交付の目的に適合した固定資産を取得した場合に、補助金相当額の範囲内で固定資産の帳簿価額を損金経理により減額(または積立金として積立て)したときは、その金額を損金に算入すると定めています。確定申告書に明細の記載があることが条件です。
圧縮記帳は免税ではなく課税の繰延べです。帳簿価額が下がる分だけ以後の減価償却費が減り、売却時の利益が増えるので、長期では同じ所得に課税されます。経費の補填を目的とする補助金や人件費の助成金には使えません。適用の可否と会計処理は税理士に確認してください。
申請は誰が行うか
申請の主体は事業者自身です。GビズIDプライムは代表者本人が取得し、電子申請も本人のアカウントで提出します。他人の依頼を受け、報酬を得て官公署に提出する書類を作成することは行政書士法第1条の3が定める行政書士の業務で、2026年1月1日施行の改正により、第19条は「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」この業務を行うことを行政書士・行政書士法人以外に禁じています。ITベンダーや経営コンサルタントが「申請代行」として書類を作り、コンサル料などの名目で報酬を受け取ることはできません。経営の相談や資料の提供を受けることは差し支えありませんが、計画を書き、提出するのは事業者自身です。
出典
- e-Gov法令検索 法人税法(第42条): https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 国税庁 タックスアンサー No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6157.htm
- e-Gov法令検索 行政書士法(第1条の3、第19条): https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000004
- 総務省 行政書士制度: https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/gyouseishoshi/
- 小規模事業者持続化補助金 第20回公募要領(第8版): https://r6.jizokukahojokin.info/doc/r6_koubover8_ip20.pdf
- デジタル化・AI導入補助金2026 事業スケジュール: https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/
- 厚生労働省 業務改善助成金: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html